最近はうつ病圏の患者さんがとても増えています。うつ病圏といっても抑うつ気分、意欲減退、集中力低下、自責感などを訴える典型的なものばかりではなく、不眠、食欲不振のみ訴える軽いものから、吐気、頭痛、めまい等の訴えを主とする身体表現性障害と診断されるもの。
あるいは職場でのトラブルなどが前景になって不安、焦燥、情緒不安定になったりする適応障害など様々なレベルがあります。もちろん前回お知らせした双極性障害Ⅰ型(躁うつ病)、双極性障害Ⅱ型によるうつ状態も忘れてはいけません。
当院に来院すると先ず臨床心理士や精神保健福祉士による詳細な病歴をとることになります。その病歴を参考に主治医が更に詳しく病気の背景を探っていきますが、その際重要なのは単極性のうつ病なのか、双極性のうつ病なのかを見極めることです。双極性障害のうつ状態に漫然と抗うつ剤を出し続けると、当初に効いたように見えてもなかなか回復がはかれなかったり、下手をすると悪化したりすることさえあります。(当院にきて双極性障害Ⅱと診断され直して、回復していかれた方はもう何十人もいらっしゃいます)
次にHAMD(Hamilton Depression Test)という世界で使われるうつ病の標準テストを行ってもらいます。当院では専門の医師がテストを行っているので信頼性が高いものになっています。このテストの結果は休職、復職を決める時の基準となります。
HAMDが概ね10以下の場合(軽いうつ状態)は、多くの場合治療は必要ですが通勤は可能であるとし、しばらく1~2週に1回の通院をして頂くことになります。その時にわたされるのは、認知行動療法プログラムの案内。これは週末土曜日に行われる、うつや不安障害の心理療法のプログラム。
このプログラムは、午前中は休職明けの人達のフォローアップをかねたグループミーティングと午後のプログラム(サタデイ・アフタヌーン・ケア)に別れていますが、新たに治療にいらっしゃる皆様には午後のプログラムが重要となります。
認知行動療法は、初期のうつ病の方々には服薬と同じくらい効果的だと英国等でも認められている位お薬と並んで重要なものです。座学が半分ミーティング半分で計3時間になります。保険診療でこれだけ充実したプログラムをもっているところは他にないと思います。
そして、HAMDが10以上(うつ状態の可能性)の人は休職に入る人もいますし、休職に入らず治療だけを行う人もいますが休まなくても必要と思われる人には、診断書を書いて残業規制などをかけることもできます。HAMDが10以上の人で必要な人には行動表を渡します。そこには毎日の起床、就眠時間、残業の有無、飲酒の有無、趣味、ネット、TV時間等を記入してもらい1~2週間に1回の診察時に主治医とそれをチェックし、よりよい治療をするための重要な資料にしてもらいます。
新しい抗うつ剤の治験をする患者さんにはHAMD 17点以上が必要条件となります。ですからそれがほぼうつ病の基準になっていきますが、この点以上になった場合、多くの人が休職をすることになります。なぜならうつ病の最良の治療は静養だからです。休職といっても1~2週間休むとよくなる人もいますし、半年ぐらい休む人がいますが大体平均は3ヶ月ぐらいでしょうか。この場合生活が不規則になりがちですから、薬、行動表、認知行動療法の3本柱をきちんと守ってもらいます。
なかでも規則正しく服薬してもらうことと、起床時間と就眠時間を乱れないようにすることはとても大切なことです。
休職が長引きそうな方や毎日家にいるだけではかえって不安になってしまう人には、リワークをお勧めしています。これは原則3ヶ月以上のプログラムですが、資料をご覧になると分かるとおり毎日クリニックに集まり、さまざまなプラグラムをこなしてもらうものです。
現在ではこのリワークプログラムは長期休職者には必須のプログラムとされており、今全国に普及しつつあるところです。
このリワークプログラムはとてもしっかりしたもので、ここの卒業生に再休職になった人は殆どいません。参考までにCBTとリワークの内容をあげておきます。
うつ病はこわいものでもなんでもありません。合理的な計画できっちり治療すれば、必ず治るものです。ぜひ当院をお訪ねください。
★上記の表は一般的な基準であり、病状には個人差があります。各人の状態に合わせて治療方法を考えて行きます。
医療法人社団こころの会理事長・タカハシクリニック院長 高橋龍太郎
>>認知行動療法による「サタデイ・アフタヌーン・ケア」のご案内
>>目黒駅前メンタルクリニック「リワーク・就労サポートデイケア」のご案内