精神科の外来で、「自分は内気で人前でしゃべれなくて、いつもネクラと言われるけど、ネクラを変えてネアカに変わりたい」という人がたくさんいます。
ネクラというのは人とうまく対応できない、とか、なんだかんだいろんなことを言うかもしれないけど、基本的には「一人でいられる」ということです。「群れないで済む」ということ。こういうみんな群れたがる日本の中にあって、「一人でどっしりいられる」というのは、むしろ、存在価値が高い。
「ネクラを変えたい」という人はすごく多いんです。でも、「ネクラ」というのは、「明るく見えているのに本当は根っこに暗いところがあるでしょう」という言い方なんであって、「根暗」は本当に暗いのとは違うわけ。
「ネアカ」というのは「すごく寂しそうにしていたり、つらそうに見えるけど、本当は根っこは明るいんでしょ」ということなの。それが「ネアカ、ネクラ」という流行語になった途端、カタカナ語になったからかもしれないけれど「すべてが明るい、すべてが暗い」というふうに二分化されてしまった。「根っから暗い」という意味になってしまった。
自分のイメージというのも、ある程度付き合いがあると、何となく固定されて、ちょっと変えたいと思う時もありますよね。自分のイメージを変えたい。それはそうだね。でも、イメージを変えるということの前に、自分の「軸」を定める必要がある。
例えば、ネクラの人が「ひとりでどっしりといられる」というのも、軸。
そういう人のほうが軸を定めるというときは、周りと一緒にフラフラしている人よりは、はるかに軸を決めやすい。軸を決めてからは、イメージを変えるのは、自分が「人格を遊ぶ」ということだから、別に大きな問題はない。
問題は軸ですよ。軸が変わっていない、自分がこういうものだというのがしっかりしていたら、逆にイメージはいくらでも変えることもできるし、変えることを楽しむこともできる。「変える」といっても、それはある種の遊び心だからね。
例えば、洋服を変える、髪型を変える、カラオケで今まで歌えなかった歌をひそかに一ヶ月秘密練習をして歌えるようになる、とか。イメージを変えるというのは、そういうレベルのこと。
それくらいの簡単なレベルのイメージにいつもこだわって、自分の持っている性格そのものを何か無用なものとして考えること自体がちょっと違っていると思えてきませんか。
院長 高橋龍太郎著書「人生にはしなくてもいいことがいっぱいある」より抜粋
高橋院長のひと言
「一人でいられるようになること」これができるようになれば、他人との関係でビクビクしなくてすむようになります。
すると不思議な位、他人との関係もよくなってきます。
タカハシクリニック 院長 高橋龍太郎