お金があれば、モノがあれば楽しいわけじゃない、というのは分かっている。でも、いったい何がほんとうに自分を幸せにしてくれるのか、それが分からない。そう思うかもしれませせん。でも、楽しくするにはささいなことで充分なんです。
小さなことに喜べる力というのは誰にでもあるのに、なかなか気づかなかったりします。そういうのに気づくようになる第一歩というのは、ひとり遊びができるかどうか。こればっかりは習慣というしかないところがあります。
子供の頃、男の子は野原に出て行って、トンボやバッタを捕まえて、飽きることがない。自然と会話することで、楽しんでいる。女の子は、たいてい人形でひとり遊びをするでしょう。お人形さんで自分の家族を対象化して、いろんなお話を作ったりする。そういうお話を作る能力は大人になるにつれ、いつのまにか「子どもの能力」としておとしめられてしまうんですね。
「そんな空想のお話なんて現実の役に立たないから、捨ててしまいなさい。そうじゃないと大人じゃないわよ」と言われているうちに、みんなそういう「ひとり遊び力」を失っていってしまうわけ。
でも、小さなことにも喜びを見出せる人というのはそういう能力を失わない。失わないまま、非現実的なのも、本とか映画とか、アートとか音楽とか、そういうものを自分の中で手元に置いておけるように変わっていくわけ。
ひとり遊びができて、退屈しない能力というのは、小さい頃のお人形遊びや、トンボ取りなどで鍛えられるとすると、だから子どもの頃に、そういう能力を鍛えれば鍛えるほど、その人の潜在的な力になる。
子どもは、一人遊びをすることで脳の細胞がネットワークを爆発的に広げているのですが、一方で、現実は脳の発達に追いついていかないとも言えます。そのため、その差が潜在的な能力として大人になっていくわけで、大人になって、それをうまく引き摺り出してやるというのが、人生を楽しくする大いなる秘訣なのではないでしょうか。
院長 高橋龍太郎著書『人生にはしなくてもいいことがいっぱいある』より抜粋
高橋院長のひと言
一人遊びというと現代では、ゲームやネットのYouTube、SNSを上げる人が多いでしょう。それも「ほどほど」なら十分一人遊びになります。ただし、現代の一人遊びでは、かなり受身で過剰に脳を刺激するものが多いので「とことん」のめりこむと、依存症になってしまうおそれがあります。そこは充分注意しましょう。
私としては、ディスプレーの小さい画面に熱中する一人遊びよりも、物をつかったり、自然のなかで楽しめるような一人遊びをよりおすすめしたい気持ちです。
タカハシクリニック 院長 高橋龍太郎