「話し下手」は人、自分が上手くしゃべることができないと悩む人は、ありきたりですが、「聞き上手」になるのが問題解決の秘訣です。
ただ間違えないでほしいのは、「聞き上手」というのは、ただうなずいてニコニコ聞いている、というのではないということ。「相手が言っていることのポイントを間違わないで受け取れる人」が本物の聞き上手です。
例えば、「質問はありますか」というときに、問題が分かっていて「向こうが質問されたいだろうな」というようなところを質問してくるような人。
話というのは、相手の「言葉」だけではなくて、言葉を発しているときの「体のメッセージ」というのがすごく大きいわけ。言葉を受け止めるのと同じように、体が送っているメッセージを受け止めて、「ああ、ここがポイントなんだな」ということが分かるということが、「聞き上手」ということです。
「体のメッセージ」というのは、いわゆるボディランゲージ。しゃべっているときは、自然と体が動きますよね。顔の輝き、表情、手の表情、強さ、声の大きさ・・・そんな強弱のターン、いろんなバランスの中で、「あ、これは強く言いたいんだな」と、うまく感じ取るということ。それが「聞き上手」ですよね。
話を聞いている時に、話をしている人の一番言いたいことを読む、ということから始めてみればいい。そうすると、その人がどのように強調したか、どのように話を展開したか、ということは当然耳に入っているわけだから、話し上手になろうとしたら、その人のコピーをすればいいわけ。
日本人は「雄弁は銀、沈黙は金」で育っている人が多いんです。何も質問しない人がむしろ優等生で、黙っているほうがカッコいいと思っている。質問をしている人はバカだから質問しているんだ、というような雰囲気があるでしょう。よく話すというのは、分かって黙っている人にくらべると下のレベルだ、というふうに育ってきているようなところがある。だけど、外国人は、質問しないと「お前ら、ホントにまじめに聞いていたのか」と怒る。
例えば、スポーツ選手でも、外国人はちょっとひとこと言うのでも、こじゃれているし、雄弁でしょ。スターが子どもを連れてきて、記者会見で、坊やに何か質問があった時に、坊やが一言「イエス」とか「ノー」とかしか答えないと、親はその場で怒ります。人が聞いているのに「イエス」「ノー」しか答えられないのは失礼にあたるから、ちゃんと理由を言いなさい、とその場で注意する。
人とのコミュニケーションというのは、そういうことなんです。人に自分を分かってもらおうと思ったら、何か少しでも言葉を足していかないといけない。けれど、残念ながら日本人はそういう精神を育てていないので、そもそもそんなにたくさん「話し上手」はいないんです。だから「話す」のはしゃべりの能力を持っている人にまかせておいて、自分は「聞く」に徹する。人前でしゃべるのはむしろヘタでいい、というくらいに思っていて充分です。苦手なものを克服しようとしても、心に負担をかけるだけですからね。
それでも、この日本の沈黙社会では充分評価されるのですから、なんの心配もありません。それに聞き上手に徹していくうちに、少しずつ話し上手に変わっていくのは、時間さえたてば誰にでも起こること。それがコミュニケーション(相互交流)の不思議なところです。
院長 高橋龍太郎著書 『人生にはしなくてもいいことがいっぱいある』より抜粋
高橋院長のひと言
発達障害の人が、コミュニケーション能力に問題があると言われているというのは、このうまく聞くということができないことから言われることが多いのです。
人が喋っていると、その途中で思いついたことを突然口に出してしまうのですね。その人のために、全体の話の流れが中断してしまうのですから、周りの人からは「コミュ障」と言われるのもやむを得ないかもしれないですね。
でも、外国人からしたら、喋っている演者に全く質問しない日本人も、逆の意味で「コミュ障」かもしれません。
タカハシクリニック 院長 高橋龍太郎