うつ治療の長期化
最近、初診の患者さんの相談で目立っているものがある。
「何年にもわたって、うつの治療をしているけどなかなかよくならない」というものだ。一時期はよくなるものの、長続きせず、診療所を転々としてしまったり、あまりよくなった感じはしないが主治医を代えるのはよくないと思って5年きた、これでいいのだろうかと心配になっているケース等々いろいろだが、問題はうつ治療の長期化である。
過去10年新しい抗うつ剤の使用が普及して、不安障害や適応障害、うつ病圏の患者さんがあまり負荷なく治療できるようになった。でもその一方で、うつっぽければ抗うつ剤を使っていれば大丈夫という、荒っぽい治療も目立つようになってきている。
うつの治療が長引いていたり、抗うつ剤が一時的に効くけれど長続きしなかったり、再発を繰り返すうつのようなケースは、どこかでセカンドオピニオンを受けたほうがいいかも知れない。
なぜなら、そういう場合は、単なるうつ病ではなく双極性障害のうつ病の可能性が高いからだ。双極性障害というと躁うつ病と思われる人がいるかも知れないが、それは双極性Ⅰ型のことで、この場合は双極性Ⅱ型ということになる。殆どがうつの状態で、時々短く躁的なエピソードがあるが、本人はそれをよくなった時と感じるものの長続きしないため、うつだけ続くと主治医には伝えてしまう。また、こういうケースでは不安障害の合併もよくある。
そうすると抗うつ剤だけの治療が長期化するが、一番困ったことは双極性Ⅱ型の第一選択薬が気分安定剤ということだ。リーマスやバレリン、ラミクタールを主に使わないで抗うつ剤だけを使用すると治療が長引いたり、なかなか良くならないどころか悪化するケースもある。
治療が長期化しているうつや不安障害を合併しているうつの方は治療方針を見直すのも大切なことだ。
医療法人こころの会理事長・タカハシクリニック院長 高橋龍太郎